知ってた?うさぎはウンチを食べるんです (´∇`)
可愛い(✕3)うさぎ。うさぎと暮らす毎日は楽しさがケージから溢れて大変です。さて、うさぎと暮らし始めたときに驚くのが「自分の出したウンチを食べちゃう」こと。今日も どこかで新人うさぎ飼いさんの「ウサちゃんダメー!!」という声が聞こえてきます。
うさぎの食糞に取り組んだ岡山大学の教授
超マジメな学術論文が出ているんです!
その論文はズバリ「ウサギはなぜ糞を食べる?」。2015年2月に発行された「岡山大学農学部学術報告 Vol. 104」に掲載されました。
論文を書いた人は?
著者は「坂口 英(Ei SAKAGUCHI)」先生。論文発表時は、岡山大学農学部の応用動物科学コースで教授を務めておられた、ガチの学者さんです。今は岡山大学を退官され、放送大学岡山学習センターで客員教授をされています。
うさぎ飼いさんの疑問に答える!
それでは、うさぎ飼いさんの疑問を解消するため、この論文を紐解いて行きましょう。
はじめに
うさぎが口をモグモグさせる動作は昔から知られていたそうで、『旧約聖書レビ記11章6節に「ウサギ,これは反芻するけれども……」という記述がある』(p.25)そうです。ウシなど反芻動物に慣れた昔の人にとっては、うさぎさんのモグモグも反芻に見えたのでしょうね。その後、モグモグが食糞であることも知られていましたが、その理由が科学的に研究され始めたのは近年になってからでした。総じて食糞行動は、うさぎにとって大事な消化機能であり、栄養戦略の一環ということが分かってきました。
草食動物の食物
草食動物のエサである植物は、以下のような2つの特徴があります。
- 特徴1: 「含まれる炭水化物の大部分が繊維質(セルロースなど)ということである.繊維質は動物の消化管の消化酵素では消化が困難であ」ること。つまり、動物自身の消化機能だけでは、植物に含まれるエネルギーを利用できないのですね。
- 特徴2:「タンパク質のアミノ酸組成が動物の要求する必須アミノ酸組成と大きく異なりまた含有量も低い場合が多い」こと。つまり、植物に含まれるタンパク質は、体が求めるタンパク質として不十分なのですね。
草食動物の消化管
草食動物は、エサとしての植物の問題点を、体内に微生物を飼って消化を手伝ってもらうことで上手く解決しました。微生物を飼う場所としては、「①胃袋や小腸より前」と「②胃袋や小腸より後」の2パターンがあります。
パターン①の代表は、ウシなどの反芻動物ですね。そして、うさぎはパターン②に含まれます。つまりうさぎさんは、胃袋や小腸のような栄養吸収器官とお尻の間に、たくさんの微生物を飼って消化を手伝ってもらっているのです。
お役に立ちます「盲腸」!
いきなりですが「盲腸」と言ったら何を連想しますか?わたしフレミングは、
- 盲腸炎
- 不要なものの例え
を連想します。辞書的には、「小腸に続く、大腸の初部。小腸が横から連なるため、下端が盲管となり、その先に虫垂 (ちゅうすい) がある。草食動物では比較的長く、消化に関与する。」(デジタル大辞泉)とのことです。。
さて、盲腸の「盲」とはどういう意味でしょうか?それは、管が先へつながっておらず、行き止まりになっていることを意味します。電車の世界では行き止まりの路線を「盲腸線」と呼びますね。
人間のような雑食動物には重要ではないため、主に盲腸炎(虫垂炎)になったとき位しか意識しません。しかし、草食動物にとっては大事な大事な器官であり、存在感もヒトとは段違い。上の図はうさぎの盲腸の模式図(論文のp.26)で、 「ウサギでは大腸に流入した消化管内容物は結腸で液相が固相部分から分離され盲腸内へと逆送されて盲腸内に貯留される.すなわち液相内容物には微粒子状の食餌残渣と可溶性成分のほか多くの微生物が含まれており,これらが他の食餌残渣と明確に分離され盲腸内に選択的に逆送される」(論文p.27)仕組みになっています。
食糞
このようにうさぎでは、「胃や小腸の後ろに微生物発酵槽を備えているために,一連の消化管の配置のなかで微生物生産物特に微生物態タンパク質の消化吸収ができない.そこで大腸で生成する微生物態タンパク質等を消化するために,直腸を経て排出した後摂取し,胃と小腸における消化過程を受けさせる」という手段がとられています。これが、「食糞(Coprophagy)」です。食糞には、次のように興味深い特徴があります。
- 「食糞の栄養に対する貢献度は、小形の動物(発酵槽) ほど大きい。また、低質な食餌(繊維含量が高く栄養素濃度が低い)ほど大きい」。つまり、うさぎのような小型動物で、しかもチモシーなど繊維質が多いエサを食べる場合、食糞が欠かせないわけです。
- 「食糞を盛んに行う動物の多くは夜行性で,日中は休息しながら,食糞を行う」。うさ飼いさんなら、お昼は基本ボーッとしていて、時たまお口をモグモグさせる様子を見たことがあるのではないでしょうか。
- はっきりしている食糞の意義は、主に大腸内で増殖した微生物の体タンパク質(微生物態タンパク質)や,微生物が合成したビタミ ンB群,ビタミンKを利用することである。
普通のウンチと「盲腸糞」の違い
うさぎは、普通のウンチ(コロコロした黒い丸)と、盲腸糞の2種類のウンチを出しますよね。我々がうさぎのトイレ掃除のときに見かけるのは、普通のコロコロうんちの方です。
これについて、「食物を摂取しない時に排泄し摂取する軟糞(盲腸糞)と,主に活動時に排泄して摂取しない硬糞(普通糞)を作ることが知られている.軟糞は通常排泄される硬糞とは形状,香り,成分が明らかに異なり,たんぱく質が多く含まれ,繊維含量は低くビタミ ンB群を多く含んでいる」(論文のp.27)のです。学者さんはウンチの香りも確かめるんですね…
そして、「ウサギの盲腸糞食は,一日のうちで主に早朝から午前中にかけて摂取され栄養源になる.軟糞はウサギによって直接肛門から摂取され,通常我々は見ることができない.ちなみに盲腸糞食を行う時間帯には硬糞は排泄されない」(p.27)。そうです。盲腸糞を食べる様子はなかなか見られないので、だからこそ初めて見たウサ飼いさんが驚くのかも…
まとめ
いかがでしたか?ちょっと驚くような習性も、理由を見てみると合理的で、うさぎさんには不可欠なものだということが分かりますね。これからもうさぎの体を知ることで、よりよい関係を築けたら良いですね。
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